彼はiPadを持っていた。 そして「前から、こうなると思っていたが、これを手にして、終わったなと実感したよ」と語る。
彼はある地方都市でレコード店(CD店)と書店を経営していた。 「書店の方は、まだ立ち読みする人などが居て、それなりに客が入っていたが、レコード店は長期にわたり閑古鳥が鳴いていた。」という。 「昔はミリオンセラーが年に何タイトルも出ていたが、最近は、そういうものが無い。嗜好が分散していて、ヒット曲が出ない・・・なんて寝言を信じる人は居ないだろう。今でもヒット曲が出ているけど店頭ではCDが売れないだけだ。」
iPodが主流になってから音楽はネットで購入するようになった。 どうしてもアルバムが欲しい時も、新品を販売するレコード店ではなく、オークションで中古を購入する。 それに、アマゾンもある。在庫があるかどうか不明な店舗に来るより、確実にかつ迅速に入手できる。街のレコード店というビジネスは、もう終わっている。
そしてiPadの登場で書店も同じ運命を辿る。 コンテンツがあれば中間の業態は不要になる。
<ミリオンセラーのタイトル数推移>
それで、今後はどうするのか? 「かなり前から、こうなることを予想してビジネスの中心を別の領域に移している」とのこと。 それは、専門性が高く、容易に参入が出来ない領域であり、かつ「顔の見える商売」がポイント。 その商売で儲けて余力があればコンテンツをビジネスにしたい。今までは流通ルートが無いと販売できなかったが、今後は必要なもの、楽しいもの、感動のあるもの、内容が良いものなら売れる可能性がある。 「素晴らしい時代になったものだ。今後が楽しいぞ」が彼の視点である。
一方、出版社の連中はどうか? 最近、ある企画で話をする機会があった。 「ここ1~2年で出版界の事情は大幅に変わり売上の減少は、秋の日の釣瓶落とし」とのこと。
しかし、この売上不振への対応策は出てこない。
このような環境の中で何かやって失敗すると責任を取らされるので、冒険はしない。 すると、ますますヒット作が出てこない。
電子書籍への不安。「情報を流す媒体(ネットビジネス)が儲けて、コンテンツは儲からない」という。 「経費が掛けられないので、良い作品は出来ない」という。 しかし、この愚痴に、殆ど説得力が無い。
同じ現象でも、全く別の反応なのが面白い。
by yuyuu-yano
| 2010-06-10 02:14
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by 矢野友遊 カテゴリ
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