明日から3日間、関連会社の中で3社の新年会に呼ばれている。 この3社は、現在では珍しい黒字会社であり、昨年の売上・利益とも好調である。 私の記憶のある限り、3社とも10年以上は黒字であり、業績は年々、良くなっている。
黒字会社は来年も黒字を続けることができる可能性は大きいが、赤字会社が黒字会社に転化する可能性は、そのままでは殆ど無いと言ってよい。
そのまま・・・の意味は、今の企業スタイルを維持した形とではの意味である。 ある事業部門を閉鎖する、売却するなどのリストラでもやって固定費を大幅削減するしか黒字転化の可能性は無い。 しかし、労働規制が厳しいので、今のスタイルを崩すのも容易ではない。 従業員に辞めて戴くのに金が必要であり、金が無いとリストラも不可能なのである。 赤字会社に金がある訳がない。 銀行が赤字会社に金を貸すことはない。 赤字なので内部留保も無い。
要するに赤字になると何も出来ないのである。 新規事業への挑戦も、従業員教育も、給料のアップも出来ない。 大量購買で安く仕入れることも出来ない。 店舗の改築も、新拠点の開設も、コンピューターシステムの高度化も何も出来ない。
インフレ時代の赤字は、風邪をひいたようなもので、従業員が一丸となり頑張れば、来期は黒字に出来たが、デフレ時代の赤字は、もう殆ど末期癌である。
これは死に至る病である。
そして、今、日本の黒字企業は全企業の26%程度しかなく、2008年から減り始めて、2009年度は71万社である。 (国税庁のデータは2009年度までしか発表はない。 なお、法人数は1法人1事業年度の解釈により事業年度数を法人数としている)
一方、赤字法人数の推移は・・・。
200万社で推移しており、一度、赤字になると、もう抜け出せないことを意味している。
M&Aバンクなどに売りに出されているのは、こうした長期赤字会社であり、表面はゆるやかな不調の会社で「買っても良いかな」と調べてみると裏にトンでもない陥穽があるので、やばい・・という例が多い。
デフレの恐ろしさは、かつてのように「法人税を払いたくないので赤字にするような操作」を行えるような環境ではないのである。 会社に現金が無ければ商売が出来ないのである。 経営者が誰もが黒字にして、内部に現金を溜め込み、戦略的に利用したいと考えている。 しかしながら、黒字にはならないのである。
こうした環境下で「赤字で法人税を払わない企業は、いくら待っても黒字にならないので、消費税を上げて補足しよう」と野田総理が考えているのであれば、どうなるかは明白だ。赤字企業は軒並み倒産・廃業となるだろう。
現在、黒字企業の経営者にとっては、競争者が減るのでこの政策は歓迎するだろう。 しかし、赤字会社の市場は戴くが赤字企業の従業員を引き受ける気は毛頭無い。
現在の黒字企業は、従業員全員が全力疾走して、ようやく黒字なのである。 本当は全力疾走しないで、余裕で黒字になりたいが、デフレの現実がそれを許さない。
一方、赤字会社の方は「全力疾走して戴いても、給料を上げることはできません」の状態。まるで環境が違うのである。従業員の士気は低くならざるを得ない。
私は赤字企業の役員として地獄の日々を送ったが、結局は黒字に戻せなかった。社員間に不信が蔓延して、パワーが拡散し、鬱病が増え、社内犯罪が表面化した。
日本経済の現状は実はそれほどの不況ではない。 むしろ、景気は良い状態だと思う。 それゆえ「景気回復が消費税率アップの条件」などと言うと「景気は良いじゃないか」となる。
景気が良いのは26%の黒字会社が全力疾走しているからである。 昨年の東北の震災も黒字会社に関連している企業はいち早く復旧し、その後、注文が殺到し、さらに赤字会社と差をつけている。 一方、赤字会社は復旧する資金が無い。
それを何とかするのが政治だと思う。 なぜなら震災は、被災者の責任ではないからだ。
しかし、野田総理はそのように考えないらしい。 そして、末期癌患者に残された生命維持装置を、消費税率アップで外す予定らしい。
今、必要なのはデフレの克服。 公共事業の再開。 これにより、末期癌患者の赤字企業が、胃潰瘍程度に回復する。努力する企業は黒字に戻れるだろ。
なお、世界経済もデフレの時代に入ろうとしている。
世界には赤字国と黒字国があるが、 赤字国はずっと以前から赤字であり、 黒字国も、ずっと以前から黒字なのである。 これは構造的なものだから変わらない。
しかし、黒字国が愚かな政府に方針で赤字になることは充分に考えられる。 この場合も、一度赤字になると、そこから抜け出すことは不可能に近い。 一度、構造が変わると容易に元には戻らないからである。
愚かな政府を選んだ愚かな国民には地獄の日々が待っている。
by yuyuu-yano
| 2012-01-03 21:33
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by 矢野友遊 カテゴリ
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