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カクテル・ピアノ、あるいはピエール・ブゾンの事

古いオーディオ・ファンならピエール・ブゾンを知っているかも知れない。


1970年の初頭、菅野沖彦氏が自分のレーベル「オーディオ・ラボ」に録音した「LAVIE」と言うLPがある。


ピエール・ブゾンは、1972年11月から3ケ月間来日して、帝国ホテルのレストランで、カクテル・ピアノを弾いていた。


菅野が食事をしに、そのレストランに入り、その音色に惚れ込み、録音を申し込んだという逸話が残っている。


 


このLPは自費出版に近く、けっこう高かった記憶があるが、オーディオ・ファンの高い評価を受けていた。私も、アルバイトで稼いだ金で、このLPを購入し、長く愛聴していた。


 


カクテル・ピアノとは、高級レストランやバーで、カクテルを飲みながら談笑している時に、そのバックで静かに鳴っているピアノである。


 


その特色は、話の邪魔になってはいけない。


その演奏はベートーヴェンの「熱情」を弾くリヒテルのようでは困るのだ。


目立たず、静かに、心地よく、バックに流れていなければならない。


多彩な装飾音でメロディを包んでいく、カクテル・ピアノの独特の演奏スタイルは、そのニーズから生まれたものだ。


 


下の曲は、「LAVIE」より、シェルブールの雨傘である。


 






 


by yuyuu-yano | 2011-06-01 23:24 | 世界の音楽
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