米国に出張し、ホテルに宿泊すると、日本と同じように朝、部屋に新聞が入る。 LAならロサンゼルス・タイムス、シカゴならシカゴ・トリビューン、ニューヨークならニューヨーク・タイムスである。
米国の新聞は基本的に地方紙であり、その地域で読まれるものだ。 部数も多くない。多くても100万部程度だろう。
ところが、この新聞が厚くて、重いのである。 日本のように、折り込みチラシで重いのではない。新聞そのものが100ページぐらいあるのだ。
それで値段が安い。 ロサンゼルス・タイムスは25¢である。 今でも25¢かは不明だが90年代の後半はこの値段であった。 他の都市の新聞は35¢とか45¢で、50¢は越えない。 ただし、ニューヨーク・タイムスは1ドルで、異常に高かった。 (日本の新聞は朝日・読売が130円。1ドル108円の現在は1ドル20セント)
日本から出張すると、夜中が日本の日中なので、目が冴えて眠れない。そのかわり、明け方に眠くなる。 ここで眠ると、午前中 爆睡することになるので、珈琲を飲みながら朝刊を必死で読む。しかし、めくれど、めくれど終わらない。
新聞の価格は安いが内容は豊富にして、けっこう深い。 記事は政治、経済、社会のみならず、それぞれの業界の細かなニュースを拾っている。
記事はほぼ全てが署名原稿である。 一つ一つの記事が長く、詳しく書いてあり、文章にも味がある。 慣れてくると面白い記事、切れのある記事を書いた記者の名前を覚えておき、その記者の記事のみを読む。 分厚い新聞を隅から隅まで読む必要はないし、朝の短い時間に読むのだから、それは不可能である。
記者は新聞社の社員だけではなく、それぞれの業界、それぞれの分野(環境とか、科学とか、各ジャンル別)を長く取材し、専門的知識を身に付けているフリーの記者と契約している。 こうした名物記者の分析には、深みがあり、納得することが多い。また、現場を踏んでいる記事なので説得力がある。
現状で新聞に「速報」を求める読者は少ないと思う。 速報ならテレビやインターネットで良いのである。 新聞は遅報(痴呆ではない)のメリットを生かすしかない。
速報は、早さに拘るため、その事実を伝えるだけになってしまう。 その分野はテレビに任せておけば良い。 これらの事件の背景、経緯、歴史的意味、判断、今後の動向などを半日、もしくは一日、遅れでも、一月遅れでも良いから、より専門的に詳しく分析した記事が求められているのである。
日本のように、何時、何処で、誰が、何をしたか・・・・5W1Hに留まる部分はテレビでも十分だ。 米国の新聞で、ギリシア神話の逸話から始まり、そこから最近の事件を紹介しながら、今後、どうあるべきかを論ずるような記事を良く見つける。 日本では5W1Hのセオリーで書かねばならず、整理部門で記者の書いた記事が勝手に切断されてしまうのだから、このような記事が出ることは無い。さらに記事が短く切られて、その裏にあるものが分らない。
「文は人なり」である。 文章は、書き手の考えや性格を表す。文章を見れば、書き手の人となりがわかる。 日本の記者は、文章家=人としては認められていないのである。 自分の書いた記事(それは自分の分身である)のコントロールも出来ない記者に、安心して合う人間はいない。信頼できないからである。 「先日の記事、どうなった」 「デスクで没にされました。詳しく説明して頂き申し訳ありません」」
「先日の記事、間違ってるぞ。あれでは話が逆じゃないか」 「私はちゃんと書いたんですが、デスクが手を入れたようです。私も記事を見て驚きました」 これでは・・・ 「もう、二度と来るな」になるのは当然である。
日本の新聞は薄くて、高い。 そして、読むと憂鬱になる記事ばかりである。 米国でUSA TODAYという全国紙がある。飛行機に乗ると置いてある新聞は、これである。 この新聞はカラーで写真や、図が多く、記事もわかりやすいが薄い。部数は220万部程度である。 この新聞に日本の新聞は近いように思う。 しかし、USA TODAYは大衆紙であり内容は薄い。
日本の新聞は、なぜ薄いのか? かつて経済企画庁があった時に、日欧米の主要都市で、特定商品の価格を調査、比較して「日本は高すぎる」「規制緩和が必要だ」と、マスコミからも、さんざん責められたが、調査品目に新聞が入っていなかった。 「一番、価格差があるのは新聞ではないか。何故、それを調査しないの?」と経済企画庁に言いたい気分になった。(気分になっただけです)
ちなみに韓国の新聞も厚くて安い。 毎日、100ページぐらいあり月間の購読料は1500円程度だ。
日本の新聞は購読部数は諸外国に比べて格段と多い。 記者の数も多いと思う。 しかし、紙面は薄い。 やはり、構造に問題があるとしか思えないのである。
by yuyuu-yano
| 2008-09-14 11:43
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by 矢野友遊 カテゴリ
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